GARAGE WORKS

diary

number:

078

2011.04.20

過去と現在

DWC

 

 

 

ついに手元に見本が届いた!

最近、一生懸命作っていた本。

DEAR.WILDCHILD」(ディア・ワイルドチャイルド)

この本をご存知の方は結構マニアック!

文・写真は共にアニキのアユム。

もともとは「通信販売限定」で5冊に分けて販売していた、世界一周をしながら作った旅ノート。

そうです、この本こそが、大ベストセラーになった「LOVE & FREE」の原作。

そして、個人的には、この本こそが、オレ自身のデザイナーとしての「出発点」になった本。

二人タッグで本を作るようになった最初の作品であり、たくさんの写真と短い文章で構成する「高橋歩らしいスタイル」は、まさにこの本から生まれたものだ。

 

どれくらいだろう、もう12〜3年前の話かな。

そして、この本(5冊分)のベスト盤として「LOVE & FREE」は出版され、「こんな本、売れないよ」という声を見事に覆し、気づいてみたら30万部を楽に突破していた。

まぁ、正直、自分たちもまさかこれほど売れるとは、思いもしなかったけれど・・・

 

あの当時の話はこうだ。

オレは当時24歳くらい。サンクチュアリ出版の立ち上げから3年が経ち、初期メンバーは、はじめからの約束通り、それぞれの道へ進み、アニキは結婚し、世界一周へ出発。オレは独立し、ひとりデザイナーとして活動を開始することに。特に仕事のアテもなんもなかったオレは、「さて、何を作ろうか?」と考えながら、しばらくのんびり過ごしてた。

 

あの当時、オレにはひとつのコンプレックスがあった。

それは「本は音楽よりダサイ」というもの。

今になって思えば、そんなことは全然ないんだけれど、あの当時は、かっこいい本が世の中にたくさんあることも知らず、音楽のCDジャケットやブックレットなどのビジュアルが、本の表紙や中身などよりずっとずっとかっこ良く見えて、なんだかいつも悔しかった。「本は好き。本のデザイナーになりたい。でも、本はダサイ。くっそー、なんで?」と、いつも思ってた。自分が好きなことを「ダサイ」と思うのは、それがなんだろうと悔しいもんだ。

 

そんな時、ある晩、ちょっとした夢を見た。

ある友達が夢に出てきて、こう言った。

「カッチョいいのが作りたかったら、CDみたいな本を作ったらええのとちゃうん?」

あってるのか、間違ってるのかは置いといて、大阪弁でこういった。

「だよね!」と思った瞬間に目が覚めて、机にあったメモ帳にアイディアをメモり、すぐに出発直前だったアニキに電話をかけ、次の日、本のアイディアを話しにアニキの家まで飛んでった。

 

旅をしながら、本を作ろうよ。撮った写真と言葉を並べて。パッケージはCDみたいなヤツがいい。

プラスチックのケースに入れて、袋に入れて、シールを貼って、なんなら専用のボックスも作ろうかな・・・本のタイトルは・・・・・?

そんで、アニキからすぐに出てきたのが「DEAR.WILDCHILD」。日本の親愛なる野生児達へ・・・

それ、いいな。それで決まり!

アニキとの仕事は、やるとなったら話が早い。

アニキとサヤカさんはすぐにオーストラリアに旅立ち、オレはさっそく本のパッケージを考え始めた。

サイズはCDと同じサイズ。

ページ数は100ページくらい。フルカラー。

専用のプラスチックケースを作った。

専用のボックスも。

袋にはやっぱりシールを貼りたくて、シールも作った。

袋はポテトチップスみたいな端っこがギザギザの銀色のヤツで、ビリッとあけてみたい! なんて思って、カラムーチョの袋詰めなんてしてる工場にお願いしたこともあった。

 

な〜んてことをしていると、だいたい想像はつくと思うが、とんでもない金がかかった。

借金は山積みだったけど、とにかく、作りたいものを作ってみたかった。思う存分。

お金を心配したアニキが、海外から「書店に流した方がいいんじゃないの?」って連絡をくれたけど、こんときばかりはめずらしく、アニキの言葉にも耳を貸さなかった。

自分でひとつひとつボックスに入れ、袋に詰めて、シールを貼り、梱包し、発送した。

まだインターネットが身近ではなかった時代。申し込みはすべてハガキだった。代引きシステムもないから、振込は郵便局。

今ではずいぶん昔のことに感じるなぁ。

 

この本は、書店に「流さなかった」んじゃなくて、「流せなかった」んだ。どちらかというと。

袋に入っていて中身はみれない。サイズも特殊。原価はとんでもなく高くて、流通の経費を考えたら、とてもじゃないが、同じ作りで今までの定価で売ることは難しかった。書店に流すなら、「普通の作り」に戻す必要があった、でも、それは絶対いやだったから。金はきついが、ここまでくると、もう意地だ。

 

こんなんだから、アニキが旅をしてる間は、自分の力では本をたくさん売ることはできなかった。

旅から戻って、アニキも一生懸命トークライブをしながら本を売ってくれた。

サンクチュアリ出版を引き継いだ社長のツルくんが本の通信販売を受け持ってくれて、ベスト盤である「LOVE & FREE」を出版してくれた。そして、それがベストセラーになった・・・

 

そう考えると、この本を作って、結構たくさんの人に助けられ、今の自分がいるんだなぁ・・・っと、しみじみ思ってしまう。

「LOVE & FREE」に引っ張られ、おかげでこの本も通信販売でもよく売れるようになった。何度も増刷を重ね、売れ続けていたけど、アニキの2度目の世界一周を機にこの本は完売次第絶版にしよう、と決めていた。

 

それが、今回ひょんなことから、復活を遂げた。正直、自分でもビックリ。

リメイクするために、12年前に作った本のデータを、本当に久しぶりに開いてみると、そのあまりのデザインのひどさに、正直恥ずかしくなったけど、なんも知らんからできるメチャクチャな良さもあって、そこはそのまま活かすことにした。

5冊分で512ページ。とんでもないページ数。

12年前の自分が何を考えながら作ったか、そんなことも感じながら、結局、その時をデザインを活かしながら全ページを「今の自分」がリメイクした。あの頃よりはずいぶん成長したなぁ、と自分でも思う。ま、当たり前か。

 

ベスト盤である「LOVE & FREE」に載っている言葉の数のざっと2、3倍はあるかなぁ。

ハチャメチャなイラストもあれば、思わず吹き出すような笑えるページもある。旅ノートならではの直感的で本能的な言葉たち。今まで出版してきた、すべての本の「原石」が詰まった本だと思う。

 

個人的には、昔の自分にカリを返せてよかった。

 

熱くなって、思わずめちゃ長く書いてしまった・・・

 

4月25日あたりから、書店に並び始めると思います。

確か定価は1900円+税。ちょっと高いけど、512ページ(まるまる2冊分!)、フルカラーの本だから、そこはご勘弁を。

 

それでは!

 

 

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